Imagin .4


【ここでは漂着物や海をテーマに拙いエッセイ等を書いてみてしまっています。】

ACT.1 時のかけら

慟哭の中を流れ行く時間。そこにはどんなドラマがあったのだろう。浜辺に打ち上げられた「時間の証」は、静かに止まった時を刻み続ける。ここに辿り着くまでどれだけの旅をしてきたのだろう。流れ行く時の階は、何処へと続いていくのだろう。

僕は昔、君と浜辺を歩いた事を思い出した。冬の強い風が波を荒々しくいきり立たせていた。そんな寒い時なのに君は「海が見たい。」と言った。僕はちょっと驚いたが、車を走らせ海岸まで向かった。やはり誰もいない。こんな時に海に来る物好きは少ないだろう。

空は鉛色の雲が重く垂れ込めていたが雲間から日が差して来るのが見えた。二人で誰もいない浜辺を歩いた。空には海鳥が風の中を舞っていた。二人とも何も話さずに暫く歩いていた。君が突然「私、冬の海好きなの。」と言った。僕は黙って頷いた。「冬の海って暗いイメージがあるけれどとても神秘的なのよ。」君は無邪気に微笑んだ。寒いのが苦手な僕にとっては、ここに長い時間はいたくなかった。「そろそろ帰ろうか。」と、僕。彼女はふと立ち止まり何かを海に向かって投げた。」 僕は「何を投げたの。」彼女は「海の神様に贈り物。」と微笑みながら言った。僕には何の事かさっぱり分からなかったが、「喜んで貰えると良いね。」と言った。

僕はずっと君が何を投げたのか気になっていた。あれからどれだけ時間が経ったのだろう。僕は今一人で浜辺を歩いている。君は僕の所から離れてしまったけれど、やっとこの海に来れた。君との想い出に浸る為ではないけれども。僕は暫く歩き続けた。君と来た冬の海では無いけれども穏やかな秋の海。潮風が心地よく感じられる。僕は浜辺に座って海を暫く眺めていた。君は今どうしているのか分からないがまだ、冬の海は好きなのだろうと思った。僕は、砂を払い歩き始めた。

小さなガラスの破片に目が留まる。seaglassだ。波に洗われたガラスである。ゴミといえばそれまでであるがその素材感は美しい。僕はそこで気が付いた。彼女が投げたのは『時のかけら』だったのだ。彼女は僕と海に来て暫くしてから旅立ったのだった。海の向こうで自分を試してみたいと言って。僕は笑って送り出した。彼女が僕にくれた物があった。それは小さなseaglassだった。『何が出来るか分からないけれども、ずっと繋がっていく時間だから大切にしたい。』と、言っていたのを思い出した。僕は、seaglassを海に向かって投げた。そうして僕は歩き出した。立ち止まっていたのは僕自身だったのだ。時の歯車がまた新たに動き出した気がした。

etc.

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